BlackEyePatch

BlackEyePatch: Tetsuya Shimoyama(212.MAG)
INTERVIEW

 

“自分らしさって何だろう”と
考えるきっかけになるような媒体でありたい

Text: Ryo Tajima

2003年に創刊され現在も続く、ニューヨークスナップメディア『212.MAG』。当時はまだSNSも存在せず、インターネットが普及し始めた時代であり、ニューヨークのリアルなファッションや街並みなどをWEBから簡単にチェックすることはできなかった。

そんな時代の中で、『212.MAG』に掲載されているスナップでは、洋服や着方、ハーレムやブルックリン、ブロンクスやクイーンズといった、ニューヨークのローカルの情報まで知ることができる貴重な資料であり、BlackEyePatchにとって、重要なインスピレーション源として現在も保管されている。

今回、『212.MAG』とのコラボレーションに際し、同メディアはどのように始まり、どんなコンセプトを持って運営されているのかを編集長の下山徹也氏にメールインタビューした。どんな思いで作られているメディアなのかを知っていただきたい。

ーーなぜ、ニューヨークでのスナップを中心としたメディアを始めようと考えたんですか?またスナップならではの魅力は何だと思いますか?

「自分が21歳で初めてニューヨークに行った時、とても衝撃を受けました。ニューヨークという街の中で、すれ違う人たちのスタイルや佇まいに、MVや広告雑誌とは全く異なる“リアル” を感じました。流行は確かに存在するけれど、それ以上に、その人の生き方や価値観、バックグラウンドが自然とスタイルに滲み出ている⸺その瞬間を残したいと思ったのが、『212.MAG』を始めた1番の理由です。またスナップの魅力は語り尽くせない程に様々な点がありますが、特に挙げるとすればそれは偶然性です。その時の天気や光、街の落書き、通りすがりの人などすべてが重なった一瞬は、二度と同じ形では再現できない。例えば、同じ人でも違う場所で出会ったら、その時は撮るか分からないし、「その人がその時、そこに居た」ことを常に大事にしています。だからこそスナップは“瞬間”であり、その街の歴史の断片でもあると思います。特にニューヨークのように常に変化し続ける街ではなおさら意味がある。ただ単にファッションやトレンドなどの表面的なものを撮りたいなら街の背景などはあまり必要ないし、逆にスタジオなどで撮影した方がその魅力を引き出せると思います。最近はスナップ風の写真をSNSでもよく見かけますが、もはやそこに偶然性などは存在せず、スナップの本質からは乖離しているように感じます。スナップの本質は作り込まれていないからこそ写る「真実」と「偶然性」にあると思っています。計算されたものではなく、ある意味で運任せ的な要素があるので、天から舞い降りて来た奇跡の瞬間をどうキャッチするかという感覚と才能が多分に必要になってくるのだと思います」。

ーースナップメディアをやるにあたって、ニューヨークという街を選んだ決め手は何ですか?

「ニューヨークを選んだ理由は、HIP HOPが生まれた街であるという点が大きかったです。またストリートバスケやスケートボードのメッカであり、中学生の頃に聴いていたシャギーやスーパーキャットといったN.Y.レゲエ、高校生の頃に好きだったキース・ヘリングなど、これまで自分が影響を受けてきたカルチャーの源流がすべてそこにあり、個人的な原体験とも深く結びついています。ニューヨークは、音楽・アート・ダンスなど、あらゆるストリートカルチャーが交差し続けてきた“聖地”であり、空気感そのものが撮影の原動力です。また、親しい友人がニューヨークに住んでいて、滞在できる場所があったことも大きな理由の1つです。そうした“偶然”が重なり、ニューヨークへ行くこと、そしてそこでスナップを撮ることは、自分にとって“必然”だったと感じています」。

ーー創刊時の2003年。下山さんはどのような生活を送っていましたか? また、当時のニューヨークはどんな様相でしたか?

「『212.MAG』を創刊した2003年当時は、日本とニューヨークを行き来する生活が日常でした。ニューヨークでは街を歩き、人と出会い、撮ることを繰り返し、日本に帰国すると写真の編集からエディトリアルデザイン、広告営業までを自ら行い、新刊をリリースすれば営業やプロモーションに出向く⸺そうしたすべての行為が、自然と生活の一部になっていました。決して余裕のある暮らしではありませんでしたが、それ以上に受け取る刺激やエネルギーは圧倒的で、毎日が発見の連続だったと感じています。当時のニューヨークは、今よりも荒削りで、良い意味で雑多さがあり、ストリートには生々しい熱や危うさが色濃く残っていました。一方、現在のニューヨークは洗練され、整備された部分が増えた反面、かつて感じていた無秩序さや勢いは少し薄れてきたようにも感じます。それでも、路上から立ち上がるエネルギーは形を変えながらもカルチャーを更新し続けている点は今も変わらず、当時と現在の違いを感じながら撮り続けること自体が、『212.MAG』の一部になっていると思っています」。

ーー『212.MAG』の編集方針やメディアのコンセプトは何ですか?

「創刊当初から一貫して、<街のリアルな空気感を切り取り、ありのまま届ける>という方針を軸に活動してきました。また、写真、テキスト、デザイン、プロモーションなどの制作プロセスすべてを自ら手掛けることで、外部に依存せず、自分たちの視点や感覚をそのまま作品に反映させることもコンセプトの一部です。今でこそ自費出版で作品をリリースする人たちが増えましたが、その姿勢は2003年創刊当初から変わらず、現在も『212.MAG』らしい世界観を作り続ける核になっています。そして、ニューヨークは特に多様性に満ちた街なので、国籍や人種、ルーツもさまざまで、それぞれが自分のスタイルを自分のルールで楽しんでいる。その自由さやエネルギーを伝えることも大切にしています。『212.MAG』は、スナップを通じてニューヨークの“今”を切り取ると同時に、見る人が「自分らしさって何だろう」と考えるきっかけになるような媒体でありたいと思っています」。

ーースナップ撮影をする時、いつもどんなことを考えていますか?

「先ほどの話と重複しますが、スナップの本質は計算されたものではなく、ある意味で運任せの要素が大きいと考えています。それは、まるで天から舞い降りた奇跡の瞬間と呼べるものだと思っています。ニューヨークを一日中歩き回っても一枚も撮れない日がある一方で、数時間のうちに多くの出会いと収穫がある日もあります。常に大切にしているのは、「その人がその時、そこに居た」という事実です。事前に予定を組み、場所とモデルを指定して撮影するものとは違い、作り込まれていない瞬間だからこそ写る「真実」や「偶然性」にこそ、スナップの魅力があると考えています」。

ーーこれまでに撮影してきたスナップで、パッと思い出される撮影は何ですか?

「逆に、撮れなかった人たちのことがよく思い出されます。自分もまだ未熟で、人との接し方や立ち振る舞いが十分に理解できておらず、チャンスを逃してしまった瞬間が多かったのだと思います。だからこそ、スナップの経験は成功した瞬間だけでなく、撮れなかった経験も含めて、自分の成長や学びとして鮮明に記憶に残っています」。

ーー『212.MAG』はどのように運営されていますか?

「現在、『212.MAG』は不定期での発行となっています。フィジカルリリースとしては、毎年カレンダーの制作・リリースを継続して行っているほか、アパレルアイテムの展開や他ブランド・クリエイターとのコラボレーションも随時行っています。またSNSでは、これまでに撮影してきた過去のアーカイブ写真を中心に発信し、212.MAGの世界観やこれまでの活動を継続的に共有しています」。

ーーここからは下山さん自身のルーツについても聞きたいと思います。影響を受けたHIP HOPカルチャーは実際にどのようなものや音楽でしたか?

「初めてニューヨークを訪れた2001年当時は、NasやJay-Z、Dipset、G-Unitなど、ニューヨーク出身のラッパーやアーティストが破竹の勢いで活躍していた時期で、街全体がHIP HOPの熱気にあふれていました。しかし、個人的に本当に影響を受けたのは、公園でのジャム、独立記念日に行われるバーベキュー、さらには路地裏のブロックパーティーや公民館でのダンスバトルなど、ストリートでの日常的な出来事でした。そこには音楽だけでなく、街の人々の生活やコミュニティ、リアルなエネルギーが息づいており、そこで感じる空気感や熱量は自分の感性や『212.MAG』の視点に強く影響を与えています」。

ーーHIP HOPカルチャーに興味を持つようになったのは、何歳頃、どのような経験からですか?

「小学生の頃にバスケットボールとスニーカーが好きになり、マイケル・ジョーダンを知ったことがきっかけでした。当時はスニーカーは高価で手に入らなかったので、近所のスポーツ店などを巡っては靴下やTシャツをディグするのが楽しみでした。特に、NIKEの広告でジョーダンとスパイク・リーがコラボしていたことが印象的で、そこからHIP HOP的な空気に触れたのを覚えています。クラスの中でこういうことに興味を持っていたのは自分くらいで、少々浮いた存在でした」。

ーー10代、20代前半の頃に愛読していた雑誌はありますか? 

「ジャンルを問わず、和書・洋書と数多くの雑誌を読んできました。『212.MAG』を創刊する前は、現地の空気感を知りたい場合、『The Source』や『XXL』、『VIBE』などを見るしかありませんでした。一方、東京には『STREET』や『FRUiTS』などのスナップ雑誌、関西では『カジカジ』なども身近にありました。また、『TOKION』や『relax』、『Complex』、『Animal New York』などもよく読んでいました。これらの雑誌はいずれもカルチャーを深く掘り下げており、単なる広告誌とは一線を画していた点が魅力でした。そうした雑誌を通じて、カルチャーのリアルな空気感に触れることができたのは、自分にとって大きな財産です」。

ーー編集業、撮影についての技術はどのように学んだんですか?

「独学で学んできました。もちろん、数多くのトライ&エラーを繰り返しながら、徐々に技術や感覚を習得していきました。『212.MAG』自体も、そうした経験の積み重ねの上に成り立っています」。

ーーこれまでの『212.MAG』の運営を経て、どんな発見がありましたか? 創刊時の2003年と比べて、心境に変化はありましたか?

「ニューヨークに行き始めた当初は、いわゆる“黒さ”や生々しいエネルギーを強く求めていました。しかし年月を重ねる中で、多様性に満ちた街の“しなやかさ”こそがニューヨークの魅力だと気づくようになりました。そこからHIP HOPカルチャーも誕生しているし、人種や文化、音楽やライフスタイルが入り混じるこの街の柔軟さや自由な空気感が、街をより豊かで奥深いものにしていると感じています。そういった意味では媒体に対する向き合い方はもちろん、根本的な部分での考え方が変わったと思います」。

ーー現在、興味があることや撮影したいものは何ですか?

「もちろん、ニューヨークは今も常に興味の対象の1つですが、シカゴやロサンゼルスなど他の都市も撮影してみたいです。そして、昔からの夢でもあるのが、1度アフリカに行くことです。しかし長年ニューヨークを見続ける中で、近年は自分のルーツを深く知りたいという思いもより強くなってきました。具体的には、日本という国の歴史や文化について、まだまだ知らないことも多く、それらを理解しながら撮影や表現に活かしていきたいと考えています」。

ーーでは、今回のBlackEyePatchとのコラボレーションでは、どのようなにプロジェクトを進めていったのか教えてください。

「今回のコラボレーションに関して、写真の選定やデザインなどは、すべてBlackEyePatchにお任せしていたので、作業の流れ的にはとてもスムーズに進みました。ただ、自分もオリジナルでアパレルをリリースしているので、どのようなクオリティで写真がプリントされるかが1番気になるポイントでした。自分主導で物作りをしていると、やはり自らの感性が色濃く出てしまうので、良い意味で自分らしくないものが出来たと思います」。

ーー今回のコラボプロダクトの中で特に気に入っているものは何ですか?

「今回のコラボアイテムにセレクトされている写真は、どれも自分の中でマスターピースと呼べるものです。写真のチョイス、ロゴを含めたデザイン全体からも、『212.MAG』を全面に押し出している雰囲気が伝わり、想像以上の仕上がりになったと感じています」。

ーー今後の『212.MAG』について教えてください。SNSの浸透によりメディアの形は大きく変わりました。そんな現代に『212.MAG』が大切に考えていることはどんなことですか?

「『212.MAG』創刊当初は、誰かが現地に行かなければ、“リアル”を知ることが出来ませんでした。だからこそメディアの重要性も感じていましたが、今は現地に行かなくても大抵のことは知ることが出来る状況です。そういった意味では『212.MAG』が変わったというより、『212.MAG』を取り巻く環境が変化しました。運営・活動していく中で色々と困難な状況もありますが、そんな中でもやはり自分たちの信念やポリシーを曲げず、独自のスタンスを貫くことが何より大切なことだと思います」

ーー紙媒体だからこその魅力はどういう点にあると思いますか?

「紙媒体は、手に取った時の質感や重さ、ページをめくるリズムまで含めて体験になるところが大きな魅力だと思います。情報を消費するというより、時間をかけて向き合うことで、写真や表現の余白まで含めて伝えられます。そして、画面越しではなく「物」として残ることで、写真や言葉がより長く後世に残る点にも魅力があると思います。写真のトーンや誌面のレイアウト、余白の使い方まで含めて世界観を1冊として繰り返し手に取ってもらえる存在になれるのは紙媒体ならではだと思います」。

ーー今後、『212.MAG』はどんなことを表現していきたいですか? また、どんな読者に届けたいと思いますか?

「今後もスナップを通じて、その時代や場所が持つ歴史の断片を記録し、作品として残していきたいと考えています。これまでは主に日本の読者に向けて発信してきましたが、これからはニューヨークをはじめ、他の都市や海外の人々にも届くメディアを目指し、今まで培ってきた独自の視点と表現でより広い発信に取り組んでいきたいです」。

212 MAG PHOTO HOODIE BLACK
¥20,900
212 MAG PHOTO HOODIE RED
¥20,900
212 MAG PHOTO CREW SWEAT BLACK
¥18,700
212 MAG PHOTO CREW SWEAT HEATHER GRAY
¥18,700
212 MAG PHOTO L/S TEE WOODLAND CAMO
¥13,200
212 MAG PHOTO L/S TEE BLACK
¥13,200
212 MAG PHOTO L/S TEE WHITE
¥13,200

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