Just Do My Thing : GRILLZ JEWELZ CEO 秋山哲哉 インタビュー
Aug 01, 2017
photo: shin hamada / text: maruro yamashita
<BlackEyePatch> の2017 Autumn / Winterのコレクションにおいて、大々的にフィーチャーされている、00年代前半のアメリカ南部のHIP HOPのスタイル。
そして、そこに決して欠かすことの出来ないのがグリルズと呼ばれる、歯に被せる形の特殊なジュエリーだ。
HIP HOPを感じさせるスタンスを崩さずに製作を続け、日本では非常に珍しいグリルズ専門店である『GRILLZ JEWELZ』を10年以上に渡り経営する秋山哲哉さんに話を聞いた。
ー宝飾の職人さんということは、一般的なジュエリーを製作されていたんですか?
「普通の指輪とかペンダントとかを作る工房の職人でした。 一般的な女の子が身に付けるような、可愛らしいものを専門で作るような工房だったんですけど、卸先の会社が、品質の基準に凄く厳しかったんです。 良い意味で修行が出来たのかなと思っています」
ーそれはクライアントの要望をクリアにするという面においてですか?
「そうですね。あとはジュエリーに関しての、物を見る目が肥えましたね」
ーグリルズというものをアメリカで知ったとおっしゃられましたが、アメリカのどこで知ったんですか?
「SOURCE MAGAZINEとか、アメリカのHIP HOPの雑誌の後ろの方のページに、グリルズの広告とかが載っていたんですよ。 それでグリルズのことを知りました。もちろん、アーティストが付けているのを見たことはあったんですけど、販売して売っているお店があるということは全く知りませんでした。 僕が実際に初めて作ったのはNYのお店でした」
ーでは元々HIP HOPというカルチャーは好きだったんですね。
「そうですね。むしろそれしか携わっていないくらいです(笑)。 いわゆるポップスとかの音楽については本当に無知で分からない感じです。HIP HOPしか聞いていないくらいの感じなので(笑)」
ーいわゆる普通のアクセサリーを作る際と、グリルズを作る際では、秋山さんのなかでは感覚的に違いはあるのでしょうか?
「感覚的にということではありませんが、作る上で一番違うことというのは、指輪とかネックレスっていうのは、型を作ってしまえば、大量に量産が可能なんです。 けど、グリルズっていうのは、お客さん一人一人の歯に合わせて、一個一個型を作らなきゃいけないので、凄い手間がかかる物だということです。 その分、お客さんにしてみれば、自分にしか合わない、オリジナルのジュエリーという付加価値があるのかなと思います」
ー全てのデザインは、お客さんからのリクエストを秋山さんが形にするという流れで進められているんですか?
「ある程度オーソドックスなスタイルに関してはホームページに出ているので、そのまま作る方もいらっしゃいます。 けど、SNSで世界中の色んなグリルズのお店が作っているグリルズの写真をチェックされて、こういう感じに、とリクエストされる方も勿論いらっしゃいますね」
ー過去に手がけた作品の中で、特別印象に残っているものはありますか?
「何個かあるんですけど、面白い感じだと、KOHHくんにお作りしているグリルズは、僕のなかでは結構面白い、独特なものだなと思いますね」
ーそれはデザイン的にですか?
「そうですね。デザインもそうですし、石の色使いもそうなんですけど、ちょっと変わっていて、僕は好きですね」
ーそういうリクエストもKOHHくんから出てくるんですか?
「そうですね。話しているうちに、じゃあこういう感じはどうなのかな? みたいな感じで決まっていくパターンが多いですね。 会話の中から、閃きがあったり、アイデアを思いついたり。そういう感じで注文を受けることがKOHHくんの場合多いですね」
ータトゥーとかと近い感覚なんですね。
「近いですね。KOHHくん自身も、ちょっとノリみたいな感じで注文するって言ってたんで(笑)」
ー現在ではリングやペンダントヘッドなどの彫金も並行してやってらっしゃるんですよね?
「基本的には、これまでに自分がやっていたようなものなので、指輪やネックレス、ペンダントヘッドだったりっていうのはオーダーメイドでお作りすることが出来ます。 むしろ、うちの場合既製品で置いてあるものが凄い少ないので、ほとんどがオーダーメイドで御対応させて頂くお客さんばかりという感じです」
ーお客さんもHIP HOPが好きそうな方が多いという感じですか?
「そうですね。でも、昔は本当にゴリゴリのBボーイっていう方しか来なかったんですけど、最近では今までのお客さんの層とは違うなという方が増えてきています。 ファッションでもそうだと思うんですけど、あまりジャンルがキッチリされていないというか」
ー秋山さんがオーダーメイド以外で、ご自身の作品としてジュエリーやグリルズを作られることもあるんですか?
「常にっていうか、ちょっと面白いものがあれば、作ってサンプルにしてますね。 勿論グリルズだけじゃなくて、僕自身ジュエリー全般がとても好きなので、どうしても自分が付けたいもの、格好良いと思うものになっちゃうんですけどね。そういうものはよく作りますね」
ーそういう時のインスピレーションの元になるものっていうのは、やはりHIP HOPなんですか?
「ベースはそうですね。あとは、どうしてもアメリカのアーティストの身につけているジュエリーとかっていうのにはどうしても影響を受けちゃいますね」
ーでは、秋山さんにとって、理想的なジュエリーの身に付け方をされているアーティストはどなたですか?
「あまりジュエリーだけでは見ないんですよね。どういう人が身に付けているかどうかが重要だったりするので。それこそ、Nasとかが付けてるのを見ると、格好良いなと思いますよね」
ー秋山さんが物作りをする際に、特別、細工をするのが好きな素材とかってあったりしますか?
「いや、それはないですかね。結局、グリルズではシルバーが一番素材としては安いんですけど、シルバーで作ってもプラチナとか22金で作っても、歯の型を作ってグリルズに仕上げるという工程自体は変わらないんですよ。 どの素材のどの値段のものでも同じように扱っているという点においては自信があります。最初にNYでグリルを作った時に、それが味って言えば味なんでしょうけど、クオリティが良くなかったんですね。向こう特有の感じなんですけど(笑)。 なので、どうせ日本で作るのであれば、日本製のクオリティの良いものを作れるんじゃないかなと考えていたんです」
ー今後グリルズがどのような存在になっていって欲しいと考えていますか?
「良いのか悪いのか分からないですけど、そんなに売れて欲しくないっていうか、難しいところなんですけど(笑)。 あんまり誰でも付けてるようなものになってしまうのは、ちょっと違うかなと。 少し特殊なものであるからこそ、身に付けたいって思ってくれる人がずっとい続けるような物なのかと思うんですよね。あまり、急に多くの人が付けちゃって、ブームで終わっちゃうのが嫌なので。 今みたいな感じというか、ちょっとニッチな感じのジュエリーであり続けるようにしたいなってのは思いますね。その方が、面白いものが出てくるんじゃないかなって、僕は思うんですよね。ちょっと矛盾してるんですけどね(笑)」
場所: GRILLZ JEWELZ
住所: 東京都台東区上野3-4-1 飯岡ビル1F